おはおーじ。
窓の外には、黄金に輝く麦畑と深い森が広がり、ワガママ王国の平和な朝が訪れる。
城は今日もまばゆいばかりの白亜の石造り。
内装は、壁一面を飾る金糸のタペストリーに、磨き上げられた大理石の床、そして天井からは数千のクリスタルが輝くシャンデリアが、王家の誇りを示すように吊り下げられている。
そんな豪華絢爛な空間にを、眠そうな目で歩くお姿がある。

……ふぁ……。
執事、今日の紅茶は、いつもより少し香りが薄い気がするよ……?
それに、今日の朝食に緑色の丸い粒が入ってないか、ちゃんと確認したかい?
僕サマ、あいつ(グリンピース)だけは絶対に許さないからね!
鮮やかな緑色の髪は、あちこち勝手な方向に跳ねてボサボサ。
少し左に傾いた小さな王冠が、今にも落ちそうに引っかかっている。
緋色のシャツに茶色のズボン、その上から白いファーのついた真っ赤なマントを羽織っているけれど、パジャマの上から急いで着たのか、どこか隙だらけだ。
眠そうな緑色の瞳をこすりながら、トボトボと歩くワガママ王子サマ。
頬にはまだ枕の跡がついているけれど、その気品あふれる立ち姿は、まさに愛されるために生まれてきた王子サマそのものだ。
ワガママ王子サマは、重厚な彫刻が施された椅子にちょこんと腰を下ろした。

……おや?
執事。
これは……新しいタイプのカトラリーかな?
それとも、お城の柱の破片が落ちてきたのかい?
銀皿の上に鎮座する、カサカサの「茶色くて細長い物体」を指さす。

いいえ王子サマ。
それはただのパンの端っこ、いわゆるパンの耳でございます。
カトラリーとしてお使いになってもなにも口に運べませんよ。

……王子サマ。
実は、そのパンの耳の隙間に、ミクロ単位まで粉砕したグリンピースを練り込もうと試みたのですが……

……!
今、僕サマの『グリンピース・センサー』が激しく反応したよ!
シェフ、さてはどこかに隠したね!?

……やはりバレましたか。
王子のそのセンサーだけは、鉄人の包丁捌きでも誤魔化せませんな。
なんて、冗談ですよ。
今の私にできる精一杯の癒しとして、『究極の塩』だけ振っておきました。

王子ぃ!
好き嫌いしてクンクンしてるお姿も超絶かわいいですっ!
私がそのパンの耳、心を込めてリボン結びにしましょうかっ?
ああん、もう食べちゃいたい!
そこへ、紋付き袴に算盤(そろばん)を腰に差し、眉間に深いシワを寄せた大臣が、抜き足差し足で現れた。

王、王子サマ……!
申し上げにくいのですが、我が国の国庫はもはや風前の灯火。
小銭すらほとんど残っておらぬ空っぽの状態でございます。
このままでは、このシャンデリアも、その椅子も、すべて売り払わなければなりませぬ!
今朝のその『パンの耳』は、ワガママ王国が誇る、最後から二番目の兵糧(ひょうろう)でございますですじゃ!

……えっ!?
これを食べ終わったら、次は僕サマの大事なマントを売っちゃうってこと!?
そんなの、絶対イヤだよぉ!

『武士は食わねど高楊枝』……。
たとえ腹が減ろうとも、ワガママ王国の武士(もののふ)たるもの、悠然と構えるのが礼儀にございます。
……ぐうぅぅぅ
(盛大に鳴る大臣の腹の虫)

大臣、お腹の虫が『武士道なんて言ってられない』と叫んでいますが。
早くその算盤を置いて、現状を王子サマに報告してください。

……ううっ。
もしいろいろなモノを売ることになれば、この大臣、責任を取って潔くここで腹を召す覚悟でございます!
いざ、武士の情け……切腹ですじゃぁぁ!
(刀の柄に手をかける)

ひえぇぇ!
ダメだよ大臣!
床が血で汚れちゃうし、僕サマ、そんなの見るの怖いよぉ!

さあ王子サマ。
大臣の血飛沫を見るか、パンの耳を噛み締めるか。
どうやら二つに一つのようでございます。

……うう、わかったよぉ!
僕サマ、パンの耳を食べて、絶対にこのお城とみんなを守ってみせるよ!

おおお、王子サマ……!
なんと武士(もののふ)のごとき潔い決意!
感服いたしましたですじゃ!
さあ、その決意をブログという名の『公文書』に認(したた)めるのですじゃ!
ワガママ王子サマは、リボンのかかったパンの耳を手に取った。

もぐもぐ……。
うん、これはグリンピースが入ってない、安心の味だね!
でも、これが終わったらお城がなくなっちゃうなんて……。
みんな、僕サマのマントと、このワガママ王国を守るために、力を貸してほしいんだよ…。
国民(読者)の皆様へ
ワガママ王国の再建物語、ついに開幕です!
王子サマのマントが雑巾になる前に、そして大臣が本当に腹を切る前に、皆様の温かい応援(コメントや支援)をお待ちしております!
次回の更新もお楽しみに!
おつおーじ。


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