おはおーじ!
みんな、メリークリスマス!
……と言いたいところだけど、今のワガママ王子サマには、そんな元気、1ミリも残ってないみたい。。
ついさっきまで、お城の中は最高の匂いがしてたんだ。
こんがり焼けた、キツネ色の大きな七面鳥。
テーブルの真ん中でキラキラ輝いていて、王子サマももうお腹ペコペコで「お肉だー!」ってフォークを構えたんだ。
でもね、ナイフを入れた瞬間、異変に気づいたんだよ。
そんなワガママ城の今夜の様子をのぞいてみよう。
聖なる鐘の音が遠くから響き、ワガママ王国の白亜の城は、幻想的な雪のベールに包まれていた。
食堂には、この日のために磨き上げられた銀の燭台が並び、キャンドルの炎が温かく揺れている。
そこへ、期待に胸を膨らませたワガママ王子サマが、弾むような足取りで現れた。

みんな、メリークリスマス!
おやおや、執事。
この香ばしい匂い……ついに、ついに僕サマの目の前に『本物』が降臨する時が来たようだね!
テーブルの中央には、キツネ色にこんがりと焼けた、見事なまでに巨大な七面鳥が鎮座していた。
その照り輝く質感は、まさに王家の晩餐にふさわしい威厳を放っている。
ワガママ王子サマは、緑色の瞳を輝かせ、意気揚々とフォークとナイフを構えた。

さあ、まずはこの一番美味しい腿(もも)のところから……えいっ!
しかし、ナイフを突き立てた瞬間、心地よい肉汁の音ではなく、「カサッ……」という乾いた、どこか虚しい音が食堂に響き渡った。

……?
執事、なんだかこの七面鳥、すごく……手応えが軽すぎるよ?
それに、切っても切っても『白い層』が出てくるんだけど、これって新種の希少な部位かな?

王子サマ、それは希少部位ではございません。
……シェフ、説明を。

(膝から崩れ落ち、震える声で)
……王子サマ!
申し訳ございません!
その七面鳥……実は、我が王国の全在庫である『パンの耳』三千枚を、私が寝る間も惜しんでプレスし、表面にカラメルを塗って成形した『パン・ド・七面鳥』にございます……!

……えっ。
パンの耳……?
三千枚……?
呆然と立ち尽くすワガママ王子サマの背後から、ガシャガシャと騒がしい音が近づいてきた。
そこには、紋付き袴の上に無理やりサンタクロースの赤い帽子を被った、大臣の姿があった。

王子サマ!
『武士は食わねど高楊枝』……。
サンタ殿に国庫の回復を願いましたが、響いたのはこの算盤(そろばん)の虚しい音のみ。
もはやこれまで!
王子サマに肉の一片も捧げられぬ不甲斐なさ、この大臣、クリスマスツリーの前で潔く腹を召しますぞ!
いざ、聖夜の切腹ですじゃぁぁぁ!
(刀を抜きかける)

ひえぇぇ!
大臣、サンタ帽被ったまま刀を抜かないでよ!
余計に怖いよぉ!

(ピンクの髪を激しく揺らして)
王子ぃ!
絶望してフォークを落としたお姿も、儚くて最高に尊いですっ!
パンの耳が喉に詰まらないよう、私が一欠片ずつアーンして差し上げますからっ!

王子、泣いている暇はありません。
このパンの耳三千枚を食べ切らなければ、明日の朝食も、昼食も、夕食もございませんよ。
さあ、大人しく咀嚼(そしゃく)を。
窓の外では雪が静かに降り積もる中、豪華な食堂には、ワガママ王子サマがパンの耳を噛みしめる切ない音だけが響いていた。

もぐもぐ……。
……ふえぇ、味はただのパンの耳だよぉ……。
みんな……僕サマのクリスマス、これで終わりなんて悲しすぎるよ!
国民のみんなは、今夜何を食べてるの?
僕サマにお肉の自慢をしてもいいけど……見せられたら悔しくて、このシャンデリアを売っちゃうかもしれないからね!
おつおーじ。



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