君は、歌っていた。
君は、泣いていた。
君はギターを抱えていた。
君は寂しさを抱えていた。
君は歌いながら泣いて、寂しさをかきならしていた。
その弦のひとつひとつが、張りつめた君の心のようで。
じゃらじゃらと動く人々のピックが、いつ君の弦を切ってしまうのか。
僕は気が気ではなくて、歌うどころではなかった。
それでも君は声を張り上げて。
雨の日も風の日も晴れの日も。
笑顔の仮面で歌い続けた。
君の歌声が空気の層のように重なり合っていって。
僕らの日々も積み重なっていって。
ある時、君は僕に言った。
キミは、お日サマから生まれたんだ。
あの明るくて眩しくて暖かい、お日サマから。
お日サマから生まれたから。
お日サマから生まれたと書いて。
ボクの星なんだ。
お日サマから生まれた星。
君は僕のことをそう呼んで。
そして僕を抱きしめた。
「キミはボクのワガママな王子サマだよ」
夜空に輝く一番星。
それはキミが、お日サマから生まれたから。
ボクの希望の星だ。
君は僕を王子サマにして。
君は僕をお星サマにして。
君は僕を君の希望にして。
そして君は・・・。
君は、どこに行ったのだろう。
君はどこに行ったのだろうか。
君の涙が雲になって。
君と僕の間を遮って。
君は僕を星にして。
再びその場所を訪れた時。
君はそこにいなかった。
僕は。
僕サマは。
お日サマから生まれた、輝く一番星。
そして、僕は。
僕サマは。
ワガママ王子サマ。
そう。
僕サマは、ワガママ王子サマ。
お日サマから生まれた星の王子サマ。
だからいびつにアンバランスに、でも優しく輝き、やわらかく照らすよ。
この、残酷な世界を。
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