僕サマは立っていた。
目の前には白線があった。
そこは荒野で。
乾いた風が右から左に吹いていた。
前髪が揺れる。
まるで不安に揺れる心のように。
一歩。
乾いた大地に、一歩。
踏み出せばそれははじまる。
物語ははじまるんだ。
たった一歩で。
手綱を握りしめる。
白馬は前を見据える。
その瞳に映るのは。
閑散とした過去か。
未知なる未来か。
地図を開いてみた。
なにも書いてないのは知っていた。
真っ白な地図。
あえてそれを開き。
どの道を通るか考えてみるけれど。
そこに道などはない。
わかりきっていた。
あゆみの後にこそ、道はできるのだ。
僕サマが歩いた後が道になる。
だから一歩。
この一歩。
今、一歩。
踏み出せ。
僕サマは王子サマ。
ワガママ王子サマ。
自分で始めるんだ。
そう心に決めて。
一歩。
歩みをはじめた。
はじまる。
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